遺言・遺産相続に関する基礎知識
1株当たりの相続税評価の引き下げ
1.一時的な利益の下落
類似業種比準価額を採用している会社において、効果がある対策です。類似業種批准価額は、評価対象会社と事業内容が類似する業種に属する上場会社の経営指標を比準させて評価する方式で、配当、利益、純資産の要素に注目した評価方法といえます。
この類似業種比準価額による評価額の決定要素の中で一番影響が大きいものが利益です。例えば、役員退職金の支給や不動産の評価の含み損を顕在化させ利益が減少した決算期は、株価が下落します。
類似業種比準価額の算定方法
配当、利益、純資産を国税庁が発表する類似した上場会社の平均値と比較することで株価を求めます。
利益は、配当と純資産と違い、3倍にした上で計算するため、評価額の決定に最も影響を与えます。
利益の引き下げ
利益は、法人にとって非常に重要なので、事業承継のために赤字としてしまっては本末転倒です。
そこで、非経常的な損失を計上することで利益を引き下げることが必要です。具体的には、役員退職金や含み損の顕在化(不動産、株式等)などが該当します。どちらも将来的いつかは発生する一時的な損失です。このような損失を表面化させることで利益額の圧縮ができれば、類似業種比準価額の株価の下落に大きな影響を与えます。
なお、ここでいう利益は所得(税務上の利益)です。税務上認められない損失等(例えば時価の下落率が50%超でない場合)を実施しても効果がないので、ご注意ください。
配当の引き下げ
株価の計算では、配当は直前期末以前2年間の平均を用います。配当を行っている場合は、無配にすることで株価の引き下げ要因になります。
外部株主が不在で、親族(法人の役員)のみが株主である場合などは、十分検討に値します。そのため同族会社では、配当を最小限に抑えたほうが税務上のメリットが大きくなります。ここでいう配当とは、記念配当などの毎期継続性のものは含まれません。
純資産価額の引き下げ
純資産価額の引き下げは、会社に与えるインパクトが大きく、簡単に実施できないことも少なくありません。ただし、利益の引き下げは、結果として純資産価額も下げるため株価の引き下げ要因にもなります。
2. 会社規模の変更
非上場会社の株式は、類似業種比準株式価額と純資産価額の組み合わせによって評価します。これらの評価は会社区分によって評価方法が異なります。そのため、会社区分を変更することで、結果として株価が低くなり、相続対策として有効に作用することがあります。
類似業種比準株式価額方式は、大会社で適用されますので、会社規模は大きくしたほうが有利となります。
会社規模を変更する方法
会社区分を決定する要素には下記の3つがあります。
① 総資産価額 ② 従業員数 ③ 売上高
会社規模を大きくするためには、3要素を大きくする必要がありますが、そんなうまくいくものではありません。
合併や事業譲渡を実施した場合には、事前に会社の方向性や戦略を練るだけでなく、相続税対策まで踏まえて検討する必要があります。
組織再編行為の活用
組織再編行為は、事業承継対策に活用できます。組織再編行為とは、合併・分割・株式交換・株式移転などを言います。
株式交換のよる株式評価額の引き下げ方法を説明いたします。
Sさんが、A社とB社の2社の株式を100%保有していたとします。A社は、大会社に該当し類似業種比準価額が低い会社で、B社は、高収益の事業会社で株価が高い会社とします。
SさんはA社に対してB社株式を譲渡し、その対価としてA社はSさんに自社株式を発行し、B社をSさんの孫会社にする株式交換を行います。
A社は株式交換によってB社株式の全株式を取得したため資産規模は大きくなります。確かにA社株式は上がりますが、類似業種比準価額による評価は資産の増減が評価額に与える影響は軽微なため、A社およびB社の合計額で考えた場合、Sさんの所有資産としての評価額を大きく引き下げることができます。
但し、課税負担を減少するためだけに行った祖機器再編行為は、租税回避行為とみなされ税務上否認されてしまう可能性があります。
特定会社の要件を外す
純資産に占める土地や株式の割合が多い会社で土地保有特定会社などに該当している場合のケースです。
土地保有特定会社等に該当すると、純資産価額方式で株式を評価することとなり、類似業種比準価額が低くても株価に反映されません。土地保有特定会社から外れれば、低い類似業種比準価額を反映した株価となります。
土地保有特定会社に該当しないためには、総資産のうちに占める土地等の割合を下げる必要があります。その方法としては、借入金等により土地等以外の資産を取得する、合併等の組織再編行為により会社の資産構成を変える等の方法があります。
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