遺言・遺産相続に関する基礎知識
遺産分割調停の手続
遺産分割調停の手続は、家事審判官(裁判官)1名と調停委員2名で組織される調停委員会が当事者の意見を聞きながらすすめていきます。実質的には調停機関の関与する協議分割といえます。
相続人間で遺産分割協議がまとまらない場合には、原則として家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てます。この場合の家庭裁判所は、相手方の住所地を管轄する裁判所又は当事者が合意で定める裁判所です(事事件手続法245条)。さらに相続人全員が同意するならば、それ以外の家庭裁判所でも調停を行えます。
遺産分割調停では、調停期日に当事者を呼び出し、原則として1人ずつ交互に調停室に入室して、調停委員2名(通常は男女1名ずつ) が事情を聞き、遺産分割の合意に向けて意見を調整します。裁判官は人数が少ないので調停期日には同席しないのが原則ですが、調停委員と頻繁に評議をして調停の内容を把握しています。
話合いの結果、当事者全員で合意ができたときには、これを裁判所書記官が調書に記載します。そしてそのときに調停が成立し、この調停調書は確定した審判と同一の効力が生じ、手続は終了します。
調停で話合いがまとまらない場合は、調停不成立として、自動的に家庭裁判所による審判手続に移行します。
遺産分割審判の手続
当事者間での話合いによる遺産分割協議がまとまらす、家庭裁判所での遺産分割調停も不成立となった場合には、自動的に審判手続に移行します。
調停手続が話合いによる解決を目指す手続であるのに対して、審判手続は、裁判官が一切の事情を考慮して遺産の分割方法を決定する手続といえるでしょう。
いきなり遺産分割の審判を申し立てることもでき、その場合の家庭裁判所は、相続が開始した地(被相続人の住所地)を管轄する裁判所となります(家事事件手続法第191条)。しかし、審判を申し立てても職権で調停に戻されることが多いので(付調停、家事事件手続法274条) 、無駄な手聞を省く意昧で、やはり調停から始めるべきだと思います。
審判の手続は、調停とちがって、話合いではなく、家事審判官が職権で事実の調査および証拠調べを行い、当事者の希望なども考慮のうえで、分割の審判を下します。
審判手続では前提問題の解決を待って審理することがありますし、審判が出ても即時抗告(異議申立て)できますから、ケースによって、1年以上かかる可能性があります。
調停と審判の違い
調停手続は、あくまでも当事者による話し合いですから、話合いの対象は比較的柔軟になっています。相続人や遺産の範囲は当然、特別受益や寄与分なども含めて話し合いの対象とすることができます。
これに対して、審判手続の場合、対象は比較的厳格になります。たとえば、相続人や遺産の範囲に争いがある場合には、その問題(前提問題) の解決のため、別途、通常の民事訴訟を提起する必要が生じることもあります。
また、審判手続においては、寄与分についてあらためて審判の申立てを行う必要があり、その申立てがなければ、審判の対象とされません。
さらに、預貯金などの可分的な債権については、法律上、原則として相続開始により当然に相続分に応じて各相続人に分割されることになっています。したがって、可分的債権は当然には審判手続の対象とはなりません。
不動産がある場合
とりわけ、相続財産に不動産がある場合、審判では、相続人に代償金を支払うだけの十分な資力がないときには、当事者が望んでいなくても、遺産の競売による換価を命じることがあります(いわゆる形式競売) 。
不動産を相続人全員の共有とする審判が下されることもあります。
これらの場合には、審判後に共有物分割の手続を採ることが必要となって、さらに時間と費用がかかるので、調停委員会の調停案を拒否して審判手続に移行する際には注意が必要です。
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