遺言・遺産相続に関する基礎知識
遺言に関する基礎知識
遺言書を作成する必要性
財産の分配方法が明確にされていない場合,遺族間で財産をめぐる紛争が生じることが往々にしてあります。
ときには裁判にまで発展し,長年しみ合うことになり,自分の親族間の関係が悪いものになってしまいます
また,法定相続と異なる自らが考える財産の分与方法は,遺言を作成しなければ実現することはありません。
遺言の作成は,自分の考え・意思を伝えるため,また,後の紛争を防止するためにも,行う必要が高いものといえます。
遺言の種類
遺言に法的な効果が与えられるのは,以下の一定の方式に従った遺言書により作成されたものに限られます。
自筆証書遺言
遺言者が、遺言本文、日付、氏名を自署し、押印をした遺言書です。
代筆やパソコンなどによる作成は認められません。
費用がかからない
簡易に作成できる
他人に知られずに作成できる
発見されない、紛失の危険がある
偽造・変造されるおそれがある
検認が必要
形式の不備や不明確な内容などの理由で無効となる危険がある
公正証書遺言
証人二人以上の立会のもと,遺言者が公証人に口頭で遺言を伝え、公証人がその内容をもとに作成しこれが公証役場に保管される遺言です。
紛失・偽造・変造の危険や不備により無効になるおそれが低い
検認が不要
時間・費用がかかる
証人が二人必要
遺言の存在・内容が知られる
秘密証書遺言
遺言内容を秘密にすることができる遺言で,遺言書に自ら署名押印する必要はありますが、遺言本文はパソコンや代筆で作成することも可能で,公証人と証人二人以上の前に封印した遺言書を提出するものです。
遺言内容を秘密にできる
発見されない・紛失のおそれなどがない
代筆やパソコンによる作成も可能
時間・費用がかかる
証人が二人必要
検認が必要
遺言の存在が明らかになる
※以上のほかに、特殊な場合のもの(特別の方式の遺言)として、
危急時遺言、隔地者遺言があります。
遺言書の有無
相続が発生した場合、まず、遺言書があるか無いかを確認して下さい。
一般に、遺言書を残す方は近親者や親しい友人に遺言書を作成したことを知らせるのが通常です。
心当たりがある方や、遺言書を預っている方は速やかにその旨を相続人に連絡するよう心がけてください。相続人が遺言書を隠したりすると、相続を受けられなくなることもありますのでご注意下さい。
自筆証書遺言がみつからない場合、公正証書遺言が作成されているかもしれません。
公正証書遺言が作成されている場合、公証役場に原本が残っているので、再度交付が受けられます。遺言書を作成した公証役場が不明な場合にも『日本公証人連合会』が、コンピュータで管理をしていますので、近くの公証役場で探すことができます。
遺言の方式まで解らないときでも、一度近くの公証役場へ問い合わせるとよいでしょう。
検認
自筆証書遺言、秘密証書遺言は家庭裁判所に検認の申立てをする必要があります。
検認とは、当該遺言書が遺言者の作成したものであることを確認し、遺言書の存在する状態を証拠として保全する手続です。
たとえば、自筆証書遺言を見つけた遺族が、自分に有利な内容となるような偽造・変造をしないよう、家庭裁判所で開封します。
相続人に検認の日を通知し、出頭した相続人の立会のもとで状態を検証します。
もっとも、遺言の状態を調査して保全する手続にすぎないので、遺言の効力とは関係がなく、検認したからといって各種方式等に反する遺言が有効になるものではありませんし、検認をしなかったからといって即遺言が無効になるわけでもありません。
なお、検認を受けなかった場合には、5万円以下の過料に科せられることになっていますし、隠匿等すると相続の資格を失いますので、注意しましょう。
遺言書に書くべきこと
遺言の主な目的は、遺産の分配について遺言者の意思を明確にすることですが、遺言の内容に特に制限はありませんので、財産の分配方法以外に、遺族に対する訓戒や葬式の指図などの意思を表しておくことも問題はありません。
もっとも、遺言者の意思表示に法的な効果が与えられるのは、一定の方式に従った遺言書により作成された、特定の法律行為(認知,未成年後見人・未成年後見監督人の指定、相続人の廃除とその取消、相続分の指定,特別受益の持戻しの免除、遺産分割方法の指定、特定財産を特定相続人に「相続させる」、遺産分割の禁止、遺贈についての遺留分減殺方法の指定、遺贈,寄附行為、遺言執行者の指定など)に限られます。
それ以外の事項が記載されていもそれだけで遺言書自体が無効になることはありませんが、一定の事項にしか法的な効果は与えられないのです。
そして、特定の法律行為以外の事項を遺言書に記載すること自体に問題はありませんが、盛り込みすぎると、内容に矛盾が生じるなどして遺言の効力に問題が発生しかねません。
したがって、遺言書には上記特定の法律行為のみを記載し、財産以外の事項に関しては、遺言書とは別に作成しておくのがよいでしょう。
失敗しない遺言書の作成
遺言事項
上記のとおり、遺言の内容として特定の法律行為以外の事項を盛り込み過ぎると、内容に矛盾が生じて遺言が無効となってしまわおそれがあるため、財産以外の事項に関しては、遺言書とは別に作成しておくのがよいでしょう。
遺言能力
遺言作成には、遺言内容を理解できるだけの判断能力が必要となります。
遺言作成時に判断能力のない者による遺言は無効とされてしまいます。
本人が認知証になったりなど判断能力が低下した場合、請求などにより成年後見人(世話・保護する人)がつくことがあります。
そして、成年被後見人(判断能力が低下した本人)も、事理を弁識する能力を一時回復したとき、立会い医師2名以上の証明の下に遺言を作成することができます。
このように、遺言者本人の判断能力が低下している場合は、後に遺言作成時には遺言能力がなかったとして遺言が無効とされないように、成年後見制度を利用するべきといえます。
「相続させる」旨の遺言
法定相続人の一人に特定の財産を取得させる方法としては、遺贈(遺産を贈与する旨を遺言に記載)があります。
しかし、遺贈の場合、不動産の所有権移転登記手続において、他の共同相続人と共同で申請しなければなりません。
また、それが農地である場合、農業委員会又は知事の許可が必要です。
さらに、借地権・賃借権の遺贈の場合、賃貸人の承諾が必要となります。
他方、特定の遺産を特定の相続人に「相続させる」旨を遺言に記載する方法であれば、上記手続が不要となります。
「相続させる」旨の遺言は、遺産分割方法の指定と解されますが、特定相続人が特定財産の有権を遺言の効力発生時(遺言者の死亡時)に確定的に取得するもので、その意味では遺贈と同様の効果が生じます。
遺留分に注意
兄弟姉妹を除いた法定相続人には、法律により、最低限の相続できる一定割合が保証されており(遺留分)、遺言によっても、これを奪うことはできません。
当然に遺言が無効となるわけではありませんが、遺留分権利者がその返還を請求する遺留分減殺請求権を行使する可能性があります。
したがって、遺言で自由に財産の取り決めをすることができるといっても、遺言者は、遺留分を考慮し、これを残すようにするか、異なる分配をする場合は、
遺留分権利者が納得できる理由を明記して作成する必要があります。
撤回と訂正
遺言は、いつでも新しく作成し直すことができます。
新し遺言が作成されると、自動的に前の遺言を撤回したことになります(なお、遺言内容と矛盾する行為を行っても遺言は撤回されたことになります)。
ただ、一度撤回された遺言の効力は再度生じることはありませんので、同内容の遺言書を作る必要があります。
また、自筆証書遺言は、偽造・変造の可能性があるので、加除訂正する方法も厳格に定められています。
遺言者が該当箇所を指示して変更を欄外に附記し、続けて署名押印しなければなりません。
不備があると、場合により遺言全てが無効となります。
したがって、内容を訂正したい場合は、新しく遺言書を作成することをお勧めします。
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