遺言・遺産相続に関する基礎知識
遺言書の作成に失敗しないためには
遺言の作成に失敗しないためには、専門家に相談するのが一番の近道です。
どうしても専門家に相談せずに作成するのであれば、一応、以下の事柄に配慮する必要があります。
被相続人の遺言能力の確認
近年、公正証書遺言であっても、裁判で遺言能力が否定されていることがあります。
被相続人に認知症等の疑いがあるときは、必ず医師の診断を受けて判断能力を確認して下さい。
また、遺言の方法を選択する際の判断のため(自筆できるか、公証人に出張を頼むのか等)の判断のためにも遺言者の状態を確認することは大切です。
認知症やその疑いがある場合
もし、認知症やその疑いのある方が遺言する場合には、以下の事柄を実践することをおすすめします。
ただし、遺言者との会話がほとんど成立しないような状態ならどのようにしても遺言が無効になってしまいますので、後日の紛争を避けるため、潔く遺言書の作成をあきらめた方が賢明でしょう。
遺言の内容を簡単なものにとどめること
複雑な遺言であるとそれだけ高水準の遺言能力が要求されるため、出来るだけ簡単なものにとどめるべきでしょう。
日常の生活状況を証拠とする
家族がビデオや日記で遺言者の生活状態や会話の内容を記録したり、かかりつけの医師にも
遺言者の状態や発言内容をカルテに記載してもらうと良いでしょう。
医師の検査
医師に知能テスト等の各種検査を実施してもらい、結果を分析して認知・判断能力があることを確認してもらって下さい。出来れば、複数の専門医に検査してもらうのがベストです。
遺言を書いている環境に配慮し、それを証拠化すること
遺言を書く際には相続人や受遺者が同席せず(不当な影響を避けるためです)、第三者に頼んで遺言書作成時の様子をビデオに撮ってもらうこと。
相続人や相続財産を確定し、網羅的に記載する
公正証書遺言の場合は、相続人と相続財産の確定を公証人から求められます。
自筆証書遺言を作成する場合も、疑義を残さないために、相続人と相続財産の確定のため必要な資料は集めましょう。
相続人の確定のためには、戸籍謄本等が必要です。相続財産の確定のためには、不動産登記や固定資産評価証明書、預金通帳、自動車の登録事項証明書や車検証、保険証書等が必要です。
そして、相続争いを避けるために遺言を残すのなら、そうして調査した遺産を漏れなく特定し、誰に何を相続させるかを具体的に明らかにすべきです。さらに、記載漏れがあった場合に備え、必ず「本書記載以外の相続財産があった場合には、その一切を○○に相続させる」という記載を入れて下さい。
遺言書を作成する動機についても説明できるにように
遺言を作成した真意は何なのかをよく考えて下さい。
たとえば、「○○には世話になったから多くあげたい」とか「××は家業を継いでいるから株を渡したい」とか、「△△には生前にたくさん贈与したからもうあげる必要はない」等をよく考えて下さい。
後日の紛争を避けるためには、遺留分を侵害しないような分け方を考えることも必要ですが、もし、遺言の内容が遺留分を侵害する場合であっても、なぜそのような分け方をしたのか、理由を明らかにすることで、相続人から理解を得られることもあります。
「相続させる」という文言を
特定の相続人に対して、特定の財産を渡したい場合は「相続させる」という書き方をして下さい。
他方、相続人以外の第三者に対して、特定の財産を渡したい場合は「遺贈する」という書き方をします(なお、相続人以外の第三者に対して「相続させる」文言は、遺贈の趣旨と考えられます)。
「相続させる」の文言が使われるようになった理由
そもそも「相続させる」という遺言は、登記を簡単に、安価でできるようにするために、公証人の工夫として生まれた文言です。「相続させる」の文言は、以下の点で「遺贈する」よりも有利です。
登記申請
「遺贈する」では、所有権移転登記手続において、他の共同相続人と共同で申請をしなければなりませんが、「相続させる」であれば、当該相続人の単独申請で可能です(不動産登記法60条,63条2項)。
登録免許税
「遺贈する」では、課税標準額の1000分の25の登録免許税がかかったのが、「相続させる」であれば、課税標準額の1000分の6の登録免許税で済んでいました。(これは平成15年4月1日に改正されて、いずれも同率になったので、今日では問題になりません)
農地法3条の許可
「遺贈する」では、農地法3条の農業委員会又は知事の許可が必要ですが、「相続させる」であれば、許可が不要です(農地法3条1項12号)。
賃貸人の承諾
「遺贈する」では、借地権や借家権の遺贈の場合、賃貸人の承諾が必要ですが(民法612条)が、「相続させる」であれば承諾が不要です。
第三者対抗要件
「遺贈する」では、第三者対抗要件として登記が必要ですが、「相続させる」であれば、第三者に登記なくして対抗できます(最高裁平成14年6月10日判決)。
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