遺言・遺産相続に関する基礎知識
本来の遺言信託
信託法上の信託の方法として、「遺言信託」 があります(信託法3条) 。
たとえば、遺言で、第三者である受託者(通常は信託銀行) に相続財産の半分を信託し、受益者) に対して、毎月定期金を給付してもらうよう信託するのです。
財産を相続させたい者が年少者だったり、障害があって財産管理能力に疑問がある場合には、遺言信託は合理的な方法のひとつといえるでしょう。
銀行の行う「遺言信託」
一方、銀行が行う「遺言信託」というのは、一般的には、①遺言の作成とコンサルテイング、②遺言書の保管、③遺言の執行(名義変更の代行等の遺産整理業務) をセットで提供することを内容とする金融機関の商品です。
銀行の遺言信託のメリット
この銀行の遺言信託にどれだけのメリットがあるのかは慎重に判断しなければなりません。
まず、①遺言書作成についての銀行のアドバイスは、通常、マニュアル的なものにとどまりますから、とくに本書で指摘したような複雑な事例では、将来の紛争を予測するという点において経験のある弁護士に及ばないといえます。
つぎに、②遺言の保管ですが、銀行が勧める公正証書遺言は、その原本が公証役場に保管されますから、銀行に保管してもらうメリットはありません。
さらに、③遺言執行については、相続開始後に相続人間で紛争が生じると、銀行は紛争に関与できないので遺言執行者にも就任せす、手を引いてしまいます。したがって、紛争解決のためには、あらためて弁護士に依頼しなければなりません。
結局のところ、銀行が勧める遺言信託は、弁護士や税理士などの専門家が日常行う遺言書の作成やアドバイスの業務と内容的には変わりがなく、銀行でなければ実施できないものではありません。
銀行の遺言信託の手数料
さらに、費用の面についても、銀行の遺言信託 では、おおむね、相続税申告税の中でもっとも高額になる「相続税評価額J を手数料の基準とし、手数料率も弁護士会の旧報酬基準と同等以上に設定したうえ、最低価格を設定しています。したがって、遺言書作成と遺言執行を弁護士に依頼した場合の平均的な弁護士費用より高くなるはずです。
また、銀行は遺言を扱うことによって資産家の財産内容を掌握し、金融商品を売ったり、融資を勧誘するという隠れた目的をもっていますので注意してください。
これに対して、銀行の担当者からは「弁護士を遺言執行者に指定してもその弁護士が死んだらどうするのか」などと言われることがあります。しかし、年齢に問題がない弁護士を頼んでもよいし、複数の遺言執行者を指定しても十分対応できますので、その点はあまり問題となりません。
金融商品への投資に興昧がないなら、銀行の行う遺言信託を利用するメリットは少ないといえるでしょう。
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