遺言・遺産相続に関する基礎知識
遺言書の種類
遺言には大きく分けて普通方式の遺言と特別方式の遺言があり、普通方式の遺言には自筆証書遺言、公正証書遺言及び秘密答証書遺言の3種類があります。
自筆証書遺言
自筆証書遺言は、遺言者が作成する遺言書です。自筆証書遺言では証人が不要なので、自分一人で自宅で作成できます。しかし、遺言の全文、日付、氏名を自書(遺言者が自筆で書くこと)し、捺印する必要があり、パソコン等で印字して作成することはできません。
また、遺言書の中の加除その他の変更は、遺言者がその場所を指示し、これを変更した旨を付記して押印するなどの手続をしなければ効力を生じないとされています。
また、自筆証書遺言については、相続開始後に家庭裁判所において検認手続をとる必要があります(同法第1 004条) 。
自筆証書遺言の作成は比較的簡単ですが、法律で定めた要件を満たさないために無効となったり、記載内容が暖昧なために紛争を招くことがあります(遺言書という紙一枚で、遺言者の財産をどう分けるかがすべて決まってしまう可能性があるため、遺言には厳格な形式が求められます。)。また、原本が1通しか存在しないので紛失しないよう保管方法に気を遣わなければなりません。かといって、秘密の場所で保管していても、場合によっては他界した後に誰からも発見されないこともあります。
公正証書遺言
公正証書遺言は、公証人が法律で定められた方式にしたがって作成する遺言書です。
公証人とは、公証役場において、ある事実や契約の成立を証明認証する職務を行う公務員で、法務大臣が任命しています。
公正証書遺言の方式としては、証人2 人以上の立会が必要であること、追言者が遺言の趣旨を公証人に口授することなどの要件がありますが(民法第969条) 、形式面については公証人が指示してくれます。公正証書道言は通常は公証役場で作成しますが、入院中の場合などは公証人に出張してもらって作成することもできます。
公正証書遺言の作成方法は自筆証書道言に比べれば若干面倒ですが、相続開始後の検認手続が不要であること、公正証書遺言の原本が公証役場で保管され紛失の危険がないこと、平成元年以降に作成された公正証書遺言は全国約300箇所の公証役場で検索してもらうことができ、遺言書の存在が明らかになることなどのメリットがあります。
また、公正証書道言の作成に関与する公証人や弁護士は守秘義務を負いますし、必要となる証人2 人も親族や知り合いで・ある必要はありません。つまり、相続人や身近な人に知られずに公正証書遺言を作成することは十分可能ですので、公正証書遺言とすることをお勧めします。
秘密証書遺言
秘密証書遺言は、遺言の内容を誰にも知られたくない場合の方式です。具体的には、遺言者が遺言書を作成して署名捺印し、これを封筒に入れて封印し(封印にも遺言書に押したのと同じ印鑑を用います) 、これを公証人1 人及び証人2 人以上の前に提出して、公証人に認証してもらいます(民法第970条) 。
この方式での遺言書は、自分の署名を除いてパソコンやワープロで作成できます。
しかし、公証役場が遺言書を保管するわけではありませんから紛失のおそれがありますし、相続開始後の検認手続も必要です。
遺言書の種類と特徴一覧表
自筆証書遺言 |
公正証書遺言 |
秘密証書遺言 |
|
簡便さ |
簡単 |
煩雑 |
やや煩雑 |
費用 |
紙代程度 |
公証役場手数料(16,000円~) |
公証役場手数料(11,000円) |
証人 |
不要 |
二人必要 |
二人必要 |
保管 |
本人、推定相続人などが好ましい |
原本は公証役場、正本と謄本(写し)は本人など |
本人、推定相続人などが好ましい |
秘密性 |
遺言の存在、内容共に秘密にできる。 |
遺言の存在、内容共に秘密にできる。 |
遺言の存在は秘密にできないが、遺言の内容は秘密にできる。 |
紛失変造の危険 |
ある |
紛失の場合は公証役場で再発行できるので問題とならない。変造の可能性はない。 |
ある |
検認手続 |
必要 |
不要 |
必要 |
メリット |
①費用がほとんど掛からない |
①家庭裁判所での検認は不要なので、素早く手続ができる。 |
①公証役場に提出するので、作成日が特定できる ②比較的費用がかからない。 |
デメリット |
①紛失、変造、隠匿等の可能性がある。 ②遺言の要件を満たしていないと無効な遺言となる可能性がある。 ③家庭裁判所での検認が必要。 |
①費用が高い。 ②手続が面倒。 |
①紛失、変造、隠匿等の可能性がある。 ②遺言の要件を満たしていないと無効な遺言となる可能性がある。 ③家庭裁判所での検認が必要。 |
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