遺言・遺産相続に関する基礎知識
遺言書を作成すべき場合
遺言書を作成することによって、相続に関する紛争の発生は大幅に予防できます。したがって、殆どの方は、遺言の作成をすることを一度は検討してみたほうが良いでしょう。
もちろん、全ての方に遺言書を作成する必要性があるかと言われれば、そうではありません。たとえば、相続人が子ども1人だけの場合や、相続人が配偶者と子ども1 人で配偶者がその子の実親だという場合なら、相続紛争が起きる可能性は少なく、遺言の必要性は乏しいでしょう。
それでも、そのような例外的なケースはまれです。法定相続人がいないとか、2人以上いるという場合には、遺言の作成を検討することをおすすめします。
特に遺言書の作成が必要となる場合
特に、以下のような方は、必ず遺言を作成するべきといえます。
子がいない夫婦の方
配偶者は常に相続人になりますが、子どもなどの直系卑属がいなくても、被相続人の父母や祖父母(直系尊属) が生存している場合は、その父母や祖父母も相続人となります。
子がいない夫婦の一方が他界した場合、他方が相続財産を処分しようとする場合には、被相続人の父母・祖父母や兄弟姉妹と遺産分割協議しなければなりません。
たとえ、兄弟姉妹も他界していたとしても、兄弟姉妹の子がいる場合には、その甥や姪が兄弟姉妹の相続権を引き継ぐことになります(代襲相続、民法第889条、第887条)ので、甥や姪と協議をしなければなりません。
このような手続をすることは遺された配偶者ににとっても煩わしいことこの上ないといえるでしょう。
どのような遺言を書くべきか
ではどうすればいいかというと、兄弟姉妹や甥、姪には遺留分がありません。ですから、直系尊属がいない場合には、「全財産を妻に譲る」という内容の遺言さえ残しておけば、すべての財産を確定的に配偶者に残すことができます。
ただし、夫婦のどちらが先に亡くなるかわかりませんので、ご夫婦が同時に遺言書を作成することをお勧めします。
また、配偶者の片方がお亡くなりになれば、その時点で遺言書は効力を失いますので、その時点で遺言書を書きなおすことをお勧めしています。
事業を運営している場合
事業を運営している方は、必ず遺言を残すべきでしょう。
というのも、事業を運営している場合、後継者に株式を集中的に継がせることが有効です が、遺言書がないと、民法によって定められた法定相続分で株式を分け合うことになります。そうすると、株式という経営権が分散してしまうだけでなく、親族間で紛争が起きて、会社経営に支障をきたす場合もあります。
このような事態を避けるために、事業承継を考えている経営者の方は、あらかじめ、遺言書を作成しておく必要があるのです。
再婚相手がいる方
再婚も、相続争いが起こりやすい要因のひとつです。
前の配偶者との間に子供がいる場合には必ず遺言書を作成するべきでしょう。
子どもたちの中には、自分たちの親が離婚して別の異性と再婚することに反感を覚えることが少なからずいます。その配偶者の存在が、実の配偶者との離婚原因になった場合はなおさらです。
また、離婚後相当の年数を経て再婚した場合でも、被相続人に相応の財産がある場合には、再婚相手の法定相続分が半分認められますから、財産をねらって再婚したのではないかと疑われるでしょう。したがって、再婚相手がが相続人になるケースでは、相続争いを避けるために、ぜひとも遺言書を書くことをお勧めします。
法定相続人が兄弟姉妹(またはその子)しかいない方
法定相続人が兄弟姉妹しかいない場合、兄弟姉妹が相続します(兄弟姉妹がすでに他界していた場合には、その子が代襲相続します。)
しかし、兄弟姉妹とは交流がないときには、遺産分割が難航する場合がありますので、できれば遺産を包括的に誰かに承継させたり、遺言執行者を指定する遺言を作成したほうが良いでしょう。
どのような遺言を書くべきか
この場合、前述のとおり、兄弟姉妹や甥、姪には遺留分がありませんので直系尊属がいない場合には、すべての財産を確定的に遺贈させることができます。
身寄りがない方
法定相続人が全くいない方が亡くなられた場合、残された相続財産は誰も処分できません。
そこで、あなたの相続財産について何らかの利害関係をもっ人( たとえば賃貸人など) は、家庭裁判所に相続財産管理人の選任を申立てなければならなくなります。
しかし、相続財産管理人の選任は非常に手間と費用がかかるため、これではまわりの方に迷惑をかけることになります。このような事態を避けるために、身寄りのない方は、出来れば、遺言を作成し、遺言執行者を指定することをお勧めします。
財産を残したいと思う近しい人がいないなら、研究機関、病院、NPO法人などに寄付することもできますので、この点も弁護士にご相談下さい。
内縁の配偶者がいる方
内縁の配偶者には相続権がありません(詳しくはコチラ)。
したがって、内縁の配偶者に相続をさせたい場合には、必ず遺言を作成する必要があります。
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