遺言・遺産相続に関する基礎知識
遺言書を作成する時期と遺言能力
遺言書を作成する時期
遺言書を書くのに早すぎることはありません。
平成23年の統計によると、日本人の平均寿命は男性が79.44歳 、女性が85.90歳で、平成22年と比較して男性は0.11年、女性は0.40年下回りました。「人生80年」という言葉が示すように、日本はまさに世界有数の長寿国です。
しかし、同年の日本人の死亡原因をみると、多い方から悪性新生物(癌) 、心疾患、肺炎、脳血管疾患、不慮の事故とされ、このうち心疾患、脳血管疾患、突然の不慮の事故は死因の約3割に昇ります。たとえば脳動脈癌が破裂すれば、くも膜下出血を引き起こして生命にかかわります。たとえ一命を取りとめてても、脳梗塞等の後遺障害が生じれば、遺言能力を失うことになりかねません。そういった持病がなくても、自分が気づかないうちに判断能力は低下していきます。そして、遺言するときに遺言能力が認められなければ遺言は無効になりますし、遺言能力に疑問をもたれる状況で遺言書を作ったばかりに、その遺言書の有効性をめぐって相続人がもめることもあります。
つまり「そろそろ遺言書を書かなくては」 と考えるに至ったときには、すでに手遅れになっている可能性が高いのです。書けるうちに遺言書を作成しておくべきです。
遺言能力
遺言能力とは
遺言をするには、その時において遺言能力を備えていなければなりません。遺言能力とは、事物に対する一応の判断力とされていますが、わかりやすくいえば、誰に何を相続させるのかを理解して判断する能力のことです。
遺言能力の判断基準
どのような場合なら遺言能力があるといえるのかが問題ですが、これが争われた数多くの裁判では、遺言者の認知症の程度、病状の変化、遺言作成の動機や経緯、遺言作成時の状況、遺言内容の複雑さの程度などを総合的に勘案して遺言の有効無効を決するのが一般で、一概にこうであれば大丈夫という基準はありません。
それでも、裁判所が特に重要視している要素を示すと、
・遺言そのものの内容が複雑なものかどうか
・年齢・病状を含む心身の状況や主治医の診断内容
・遺言前後の生活状況、言動
・遺言書の作成経緯・作成状況
・遺言書の体裁(自筆証書遺言の場合のみ)として、
・遺言者と受遺者の関係
・従前の遺言書があるかどうか
(前に遺言書があり、大きな変更があった場合にはそれ相応の理由がないと不自然と見なされます。)
ちなみに、知能テストで低い点数だった遺言者の遺言が、その後の関係者との会話内容などから有効とされた裁判例があります。逆に、知能テストでは高得点だったのに、遺言能力がないと裁判例もあります。
また、公正証書遺言を作成できたから安心だということもいえません。公正証書遺言の作成に、税理士、弁護士、司法書士らの専門家が関与したとしても、公正証書遺言が無効とされる例も少なくないのです。
遺言能力に関する紛争を避けるために
認知症や精神疾患などで判断能力が低下している方やその疑いがある方については、後々に遺言が無効であると言われる場合があります。
そのような紛争を避けるためにも、紛争が生じた場合に備えてきちんと防御するためにも、遺言の作成方法に関しては専門家に相談することをおすすめします。
遺言の作成方法について、詳しくはコチラをご覧下さい。]
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