遺言・遺産相続に関する基礎知識
廃除とは
法定相続人に著しい非行の事実がある場合に、家庭裁判所に推定相続人廃除調停申立てをすることにより推定相続人の持っている遺留分を含む相続権を剥奪する制度を、廃除といいます。
ときたま、「この相続人にだけには財産を譲りたくない」 という方が居ます。その者には財産を承継させないという遺言書を作成しても、その相続人が配偶者や直系尊属・子(または代襲者、再代襲者) など、遺留分がある相続人の場合は、遺留分減殺請求される可能性があります。そこで、推定相続人から一切の遺留分を含む一切の相続権 を剥奪してしまうのが「廃除」の制度です(民法第892条) 。
廃除の条件
廃除は非常に厳格な条件のもとに認められます。
民法上、廃除が認められるためには、①相続人が被相続人に対して虐待をしたこと、②相続人が被相続人に対して重大な侮辱を加えたこと、③相続人にその他の著しい非行があったこと、のいずれかの理由(これを廃除事由といいます。)が必要とされています。
廃除された相続人は一方的に相続人資格を剥奪されるので、家庭裁判所も容易には廃除を認めない傾向にあります。誰が見ても「これはひどい」 と納得するようなひどい虐待や非行が認められ、しかもそれが客観的証拠によって明確に認められない限り、なかなか廃除を認めません。したがって、相続人が被相続人に繰り返して暴行を加えたとか、社会的立場を失墜させるような状況で侮辱したとか、遊興のために多額の借金をして被相続人に肩代わりさせたといった特別な事情が必要であって、それらの事実を裏付けるような証拠が必要となります。
ただし、たとえば子供を廃除しても、その子供に子(孫)がいればその孫が代襲相続をしますので(民法第887条) 、注意が必要です。
生前廃除
生前にも家庭裁判所に廃除の審判を申し立てることができます。また、後述のように、遺言による廃除は非常に困難です。
ですから、廃除をしたいと考えるのであれば、ぜひ生前廃除を選択して下さい。
とはいえ、生前廃除の場合でも、廃除事由を証明できる証拠は必要になりますので、日頃から記録をするなどして廃除自由を証明ための証拠を収集するよう心がけて下さい。
遺言による廃除
被相続人は、遺言で廃除の意思表示ができます。
遺言で廃除する場合には、相続開始後に遺言執行者が家庭裁判所に廃除の審判を申し立てることになりますが、廃除事由を証明するためにもっとも重要な証拠となる被相続人自身がいないため、被相続人がその相続人からどんな虐待や侮辱を受けたのかがわからなくなり、廃除請求は困難を極めます。
したがって、先述の生前廃除を行うことをおすすめします。
仮にどうしても遺言で廃除をしたいのであれば、結果として廃除が認められない例が少なくないので、その遺言では、廃除が認められる場合 とそうでない場合に分けて、遺産の処分を定めておくべきでしょう。
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