遺言・遺産相続に関する基礎知識
不動産の相続登記
登記申請
不動産の登記は、登記上利益を受けることになる登記権利者(例えば売買における不動産の買主)と登記上不利益を受けることになる登記義務者(例えば売買における不動産の売主)が共同で申請しなければなりません(不動産登記法60条)。
ところが、「相続」を原因とする権利変動の場合は、登記権利者が単独でこれを申請することができます(不動産登記法63条2項)。
相続にかかわる登記としては、以下のように、法定相続分による共同相続登記、遺産分割による相続登記、遺言による相続登記があります。
なお、登記申請は、相続する不動産を管轄する法務局へ行うことになります。
法定相続分による共同相続登記
相続の開始と同時に遺産である不動産は、法定相続人全員が各法定相続分の割合によって共有している状態となります。
そこで、共同相続人の一人は、「相続」を登記原因として、共同相続人全員のために、単独で、法定相続分による共有持分の相続登記をすることが可能となります。
もっとも、遺産の共有は、遺産分割されるまでの暫定的なものといえますので、遺産分割前に共同相続登記をする必然性はなく、遺産分割協議が全然まとまらない場合、相続人の債権者が不動産からの回収を図るために相続人に代わって登記する場合などを除き、実際に共同相続登記がされることは多くありません。
なお、共同相続人の一人が、遺産分割前に自己の単独登記をして第三者に処分したような場合であっても、他の相続人は、自己の持分である法定相続分については、その旨の登記がなくても第三者に主張することができます。
遺産分割協議による相続登記
遺産分割協議により、特定の相続人は当該不動産を取得することになります。
この場合の登記手続は、上記の共同相続登記がされているか否かにより異なります。
なお、遺産分割による権利の取得は、遺産分割時に新たな権利の変更を生じるものといえ、相続放棄のように効果が絶対的であるわけではないことなどから、登記がなければ第三者に対抗(権利主張)できません。
共同相続登記がされている場合
遺産分割により不動産を取得することとなった相続人が登記権利者となり、持分を失うことになる他の共同相続人が登記義務者となって、共同相続人全員による「遺産分割」を原因とする共有持分移転登記の申請を行うことになります。
共同相続登記がされていない場合
この場合は、確かに遺産分割の結果として不動産を取得することになるのですが、取得した相続人が、「相続」登記原因として、単独で、所有権移転登記を申請することができます。
被相続人の先代名義等の場合
遺産である不動産が、被相続人名義になっておらず、例えば被相続人の父親や祖父等の名義になっている場合でも、当該不動産を取得することになった相続人は、単独で、被相続人名義への登記手続を経ることなく、「相続」を登記原因として、直接自己名義に登記申請をすることができます。
被相続人名義の表示登記・保存登記が未了の場合
新築後に未登記のままとなっている建物など、表示登記(不動産の所在場所・面積等を特定するための事項)がされていない場合や、被相続人名義の表示登記はあるが保存登記(誰がどのような権利を有しているかの登記)がされていない場合があります。
この場合も、不動産を取得した相続人は、単独で自己名義の所有権保存登記を申請することができます(不動産登記法74条1項1号・2号)。
相続放棄による相続登記
相続の放棄をした相続人は初めから相続人にならなかったものとみなされるなど、相続放棄の効果は絶対的です。
そして、相続放棄があった場合、他の相続人は、相続放棄申述受理証明書を添付書類として、「相続」を原因として移転登記手続の申請をすることが可能です。
なお、相続放棄の効果は相続開始時にさかのぼり、その効果が絶対的であることから、他の相続人は、相続登記なくして第三者に対抗する(自己の権利を主張する)ことができます。
また、一旦、法定相続分による共同相続登記がされている場合は、更正の登記手続をすることになります。
遺言による相続登記
登記と第三者
遺言による財産の譲渡を遺贈といい、相続財産の全部または一定割合を対象にする包括遺贈と、特定の財産を対象とする特定遺贈があります。
包括遺贈の場合でも、特定遺贈、特定物を対象とする特定物遺贈の場合でも、相続開始と同時に権利移転の効果が生じるとされています。
もっとも、遺贈による権利取得を第三者に対抗(権利主張)するためには、登記が必要とされています。
登記手続
包括遺贈も特定遺贈も、「遺贈」を登記原因として、受遺者を登記権利者、遺言執行者または相続人(遺言執行者がいない場合)を登記義務者とする共同申請が必要となります。
ただし、包括遺贈で、かつ受遺者が相続人全員という場合には、登記原因が「相続」となります。
「相続させる」旨の遺言
遺言書に特定の遺産を特定の相続人に「相続させる」と記載されることがあります。この「相続させる」旨の遺言は、遺贈ではなく、遺産分割方法を指定したものであるとされ、これと異なる遺産分割等はできず、何らの行為を必要とせず、遺言の効力発生と同時に権利移転の効果が生じるとされています。
そして、「相続させる」とされた相続人は、単独で、所有権移転登記の申請が可能となります。
相続登記の費用
登記をするためには、登録免許税という税金の納付が必要となります。
登録免許税は、不動産の固定資産評価額の1000分の4になります(遺贈により第三者に所有権が移転する場合は、1000分の20)。
別途、登記申請する場合の添付書類(戸籍謄本、住民票、固定資産評価証明書など)を取り寄せる費用がかかります。
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