遺言・遺産相続に関する基礎知識
積極財産(プラスの財産)
実務上、相続財産に含まれるのか問題となることが多い財産について取り上げてみました。
不動産
不動産は当然に相続の対象となり、遺産分割の対象ともなります。
不動産賃料等の遺産から生じた果実・収益
不動産の賃料も相続の対象となります。
もっとも、相続人がその相続分に従い取得する共有財産であるとするのが判例です(最高裁平成17年9月8日判決)ので、本体的には遺産分割の対象財産ではありません。しかし、実務上は、対象財産とする旨当事者全員が合意した場合、対象財産とすることとしています。
動産
当然に相続の対象となり、遺産分割の対象ともなります。
しかし、逐一特定することが困難な場合も多いため、いわゆる形見分けなどによって分割し、遺産分割の対象から除外することもあります。
預貯金
相続の対象となります。
もっとも、可分債権であり、相続開始とともに当然に分割されるとするのが判例です(最高裁昭和29年4月8日判決)ので、本来的には遺産分割の対象財産ではありません。しかし、実務上は、対象財産とする旨当事者全員が合意した場合、対象財産とすることとしています。
株式、国債、社債
相続の対象となります。
不可分権であり、遺産分割の対象財産となるのが原則です。
ただし、約款での一部解約が認められている場合、可分債権と同様に考える余地があります。
譲渡制限付株式の場合
株式は、財産的価値を有するものとして相続の対象となりますが、譲渡制限株式(株式のうち、その譲渡に対して株式会社の承認を要すると定款で規定されているもの)の場合は、以下のような制度が存在しています。
譲渡制限付株式の場合、このような制度趣旨を尊重するために、会社法上、株式会社は、譲渡制限付株式を相続その他の一般承継により取得した者に対して、一定の場合に、当該株式を売り渡すように請求できるという規定が存在します(会社法174条)。そのためには、売渡条項を定款に規定する必要があります。
そして、現実に売渡しの請求を受けた譲渡制限付株式の相続人は、株式そのものを相続することはできず、代わりに売渡金を取得するにとどまります。
売渡価格については、まずは当事者間の協議により決定することとし、協議が成立しない場合は、裁判所に価格決定の申請を行うこととされています。
なお、株式会社からの売渡請求は、相続その他の一般承継があったことを知った日から1年以内に行わなければならないと規定されています。
ゴルフ会員権
ゴルフ会員権とは、一定の預託金や年会費を支払うことで、ゴルフ施設を優先、特典的に利用できる資格です。もっとも、ゴルフ会員権の内容は、会員規約によって個別に定められるため、その種類、性格が多様です。
この点、預託会員制で会則が相続を肯定している場合や、会員権の譲渡によってその会員の交替が予定されているものについては、相続の対象となります。
この場合には、通常複数の相続人が共同で会員の権利内容を行使することは認められていないので、遺産分割によって1人の相続人に相続させることになります。
ただし、多くの場合、ゴルフ場会社(理事会)のp承認が必要となりますので、事前に承認が得られるか確認が必要といえます。
他方、会員規約によって相続が否定されている場合(例えば会員の死亡が資格喪失要件になっている規約がある場合)には、 会員権は相続の対象となりません。
この場合、各相続人は預託金返還請求権や滞納している年会費の支払義務といった具体的金銭債権、債務のみを相続することになります。
祭祀財産
祭祀財産とは、 系譜、祭具、墳墓をいいます。
系譜とは始祖から代々の家系を書いた家系図のことであり、 祭具とは位牌、仏壇のことであり、 墳墓とは墓石、墓地のことをいいます。
祭祀財産は、その特殊性から相続財産には含まれず、独自の承継方法が規定されています。祭祀財産は、一般の相続財産と異なり、相続人による共有という承継方法ではなく、祖先の祭祀の主宰者が単独で承継します。そして、祖先の祭祀の主宰者は、 第1に、被相続人が指定した者があれば、 その者となり、 第2に、 指定がないときは慣習に従い、 第3に、 慣習が不明なときは家庭裁判所が定めることになります。
なお、祭祀財産は、金銭的価値がある場合でも相続財産には含まれませんから、 相続分や遺留分を考慮するにあたって、その基礎財産とされることはありません。
また、限定承認をした場合でも、 祭祀財産を換価して弁済に当てる必要はありません。
香典
香典は、葬儀等の際に、死者への弔意、遺族への慰め、葬儀費用など遺族の経済的負担の軽減などを目的として交付されるものです。
これは祭祀主催者や遺族に対する贈与として解釈されます。したがって、香典は相続財産には含まれません。
香典の使途について、祭祀主催者等は、香典返し、葬儀費用や祭祀費用への充当等、香典の趣旨に従ってその使途を決します。ただし、香典返しや葬儀費用に充当してもなお残額が生じた場合、葬儀主催者に帰属するのか、相続人に帰属するのかといった点で問題にはなります。
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