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相続税申告の預り敷金の評価はどうするのか?
2017/04/30
今回のさいたま市のお客様の相続税申告では、預り敷金もあるし、山林の評価もあるし、結構いろいろもりだくさんです。
被相続人が不動産を貸している賃借人から敷金や保証金を預かっている場合、この預り敷金や保証金は賃借人に返さないといけない債務とされますので、相続財産からマイナスできます。預り敷金や保証金の計上もれがある場合には、相続税を払いすぎている可能性があります。
したがって、今回は相続税の債務に預り敷金を含めますが、そのままの金額で評価していいのかという問題が発生します。
判例によると、預り敷金については、返還するまでの期間に応じた複利原価率で、評価(割引計算)する必要があります。
判例の詳しい説明を下記に記載しますので、興味があればご覧になってください。
<賃貸ビルに係る保証金債務の額について、無利息等であることを理由としてその経済的利益の現在価値を控除することは相当でないとした事例 裁決事例集 No.24 – 146頁>
ビルの賃貸に際し、賃借人から預託を受けた保証金債務は、形式上長期かつ無利息等であるが、それは、本件保証金の利息と本件賃貸ビルの賃貸料の額の一部とを相殺して単にそのように約定されているものであり、実質的には本件保証金債務金額から控除されるべき経済的利益の額はないものと認められるから、単に形式的に無利息等であるからとして債務控除の適用上経済的利益を毎年享受するものとしてその現在価値を控除して当該債務の額を算定することは相当でない。
<無利息の敷金に係る債務控除額は、敷金の金額から、通常の利率による返還期までの間に享受する経済的利益の額を控除した金額によるのが相当とした事例>
- 本件敷金が無利息債務に当たるのは明らかであり、これを承継した請求人らは、当然に通常の利率による利息相当額の経済的利益を本件敷金の返還期までの期間享受するのであるから、その債務控除すべき金額については、敷金の金額から、請求人らが返還期までの間に享受するこの経済的利益の相続開始時の額を控除した金額によるのが相当である。
- 相続税法第22条が債務の評価について相続開始時の現況による旨規定していることからすれば、債務の評価に当たっては、相続開始時において客観的かつ具体的に確認されない事柄を影響させることは妥当ではないのであるから、相続開始日において、賃貸借期間の満了日前に本件契約の終了することが確実と認められる事情が存しない限り、賃貸借期間のうちの残存期間をもってこの経済的利益を算出するのが合理的である。
- 本件敷金のような長期無利息債務の評価に用いる通常の利率は、統一的な指標となり得る長期金利等を基準とし、相続開始時に弁済期までの金利の動向等を考慮して求めるのが相当であるから、他の財産の評価方法とのバランスをも考慮すれば、相続開始月以前10年間の長期国債(10年)の応募者利回りと長期プライムレートの平均値を基礎とし、年5%とするのが相当である。
<無利息の預り保証金及び敷金に係る債務控除額は、その元本価額から、通常の利率による返還期までの間に享受する経済的利益の額を控除した額によるのが相当であるとした事例>
控除すべき債務が弁済すべき金額の確定している金銭債務の場合であっても、その弁済すべき金額が当然に当該債務の相続開始時における消極的経済的価値を示すものとして課税価格算出の基礎となるものではなく、金銭債務について、その権利の具体的内容によって時価を評価するのと同様に、金銭債務についてもその利率や弁済期等の現況によって控除すべき金額を個別的に評価しなければならないのであり、控除すべき債務の金額は必ずしも常に当該債務の金額と一致するものではない。
無利息で預託されている金銭債務(以下「無利息債務」という。)であれば、これを承継した相続人は、通常の利率による利息相当額の経済的利益を弁済期が到来するまでの期間享受することになり、その享受する経済的利益の相続開始時における現在価値に相当する額だけ相続又は遺贈により取得した経済的価値の減殺要因が小さくなることから、無利息債務の相続開始時の評価額は、通常の利率と弁済期までの年数から求められる複利現価率を用いて相続開始時現在の経済的利益の額を計算し、無利息債務の元本額からこの経済的利益の額を控除した金額とするのが相当である。
自由が丘税理士法人 重松輝彦
貸家建付地の評価について
2017/04/26
貸家建付地とは、自分の所有する土地に自分の所有するアパートやマンション、貸しビルなど、賃貸用の建物を建てて、他人に貸している場合の土地を言います。
この場合、賃貸用建物の土地は借家人が利用することになるため、例えば自宅の敷地のように地主が自由に使える土地(自用地)よりも土地の評価は低くなります。
具体的には、自用地の評価額から、他人が借りている権利に相当する額を差し引いた評価になります。
評価額の計算式は次のとおりです。
貸家建付地の価額=自用地とした場合の価額-自用地とした場合の価額×借地権割合×借家権割合
このときの借地権割合や借家権割合は地域によって異なりますが、路線価図や評価倍率表で確認できます。なお、路線価図や評価倍率表は国税庁ホームページで閲覧できます。東京都では、借家権割合は30%です。
よく賃貸住宅を建てると相続対策になると言われますが、その根拠の一つが、この貸家建付地の評価なのです。すなわち、所有している土地が自用地ではなく貸家建付地として評価されると、相続税評価額が下がるので相続対策になるという訳です。
貸家建付地と似ているようで全く異なるものに、「貸宅地」というものがあります。両者の違いは、「借地権」などの権利が土地の上に生じているか否かという点です。
貸家建付地は、自分の土地の上に自分が所有するアパート等が建っている状態です。一方、貸宅地は、自分の土地の上に土地を借りた人が所有する家が建っている状態です。貸家建付地は自分の土地を他人に貸しているのではなく、土地の上に建っているアパート等を貸しています。でも、貸宅地は、自分の土地自体を他人に貸しているのです。
他人がそこに家を建てる前提で、自分の土地を他人に貸した場合、土地を借りた側には「借地権」という権利が生まれます。これは簡単に言えば、その土地に建物を建てて自由に使ってよいという権利です。この借地権自身が、価値を有するものとして売買の対象にもなります。一方、土地を貸した側は、借地権のついた土地の所有権が残り、これを「底地権」とか「底地」と呼んだりします。
自由が丘税理士法人 重松輝彦
相続税評価におけるゴルフ会員権の評価
2017/04/24
会計上ですと、名義書き換え停止中の時価の算定ができないゴルフ会員権なんて、紙切れみたいなものなんで、ゼロ評価にできるのですが、相続税評価額で算定するとゼロ評価にすることはできないみたいです。
判例もあるので、ピックアップしますと
東京地裁民事3部(鶴岡稔彦裁判長)は、平成16年12月16日、ゴルフ会員権の相続税評価を争点とした相続税更正処分取消等請求事件において、「ゴルフクラブの規約等に基づいて返還を受けることができる日までの期間に応ずる年8分の利率による複利現価の額による評価」と規定する評価通達の合理性を容認し、ゴルフ会員権価格の低迷や預託金返還が履行されないおそれを背景とした「通達評価への疑問」を訴える相続人の請求を棄却した(平成13年(行ウ)第270号)。
相続税評価額が争われた2つのゴルフ会員権は、いずれも預託金制の会員権で、いずれも開場当初から「名義書換停止中」となっていた。
原告は、本件相続の開始時における本件会員権の価格をいずれも0円として、相続税の申告等を行ったが、被告は、財産評価基本通達関係個別通達(相続税および贈与税におけるゴルフ会員権に関する評価について)に規定する取り扱いに基づいて「ゴルフクラブの規約等に基づいて返還を受けることができる日までの期間に応ずる年8分の利率による複利現価の額による評価」による更正処分等を行った。
原告は、以下の争点について、本件各会員権の価額を過大に評価した違法があるとして、更正処分等の取消しを請求した。
争点①(通達の合理性)
原告は、「バブル経済崩壊後、多数のゴルフクラブ経営会社が預託金の返還に窮しており、ゴルフクラブの会員が預託金を回収するのが容易でない事例が多くなっている。」として、預託金返還請求権の現価を時価とする通達評価には合理性がないと主張した。
東京地裁は、「健全な経営を続け、預託金の返還についても特段の問題が生じていないゴルフクラブも存在することも事実なのであるから、原告主張の事由から本件通達の一般的な合理性を否定するのは相当でなく、むしろ、本件各会員権について、約定通りに預託金の返還を受けられない蓋然性が存するのかどうかを個別的に判断すべきものである。」と、原告の主張を斥けた。
争点②(本件各会員権は「取引相場のないもの」に該当するか)
原告は、「いわゆる念書売買の実例があり、『参考相場』が示されるものもあったことから、『取引相場のないもの』に該当するとしての通達評価には、通達の解釈適用の誤りがある。」と主張していた。
東京地裁は、「買主において、ゴルフ場の優先的利用権が完全には行使されないというような問題を含む念書売買の価格をもってゴルフ会員権の客観的な交換価値を示すものと見ること自体に疑問の余地がある。」と指摘し、「本件各会員権について、仮に、取引業者の間に何らかの指標が存在したとしても、それは、当該取引業者の個別的な判断に基づく評価の域を出るものではなく、相続税の計算における相続財産の評価の基礎とするに足りる一般性のある相場が、ゴルフ会員権の取引業者の共通認識として形成されていたとはいい難く、結局のところ、本件各会員権について、本件通達にいう『取引相場』が存在したと認めることはできない。」と、原告の主張を斥けた。
争点③(通達評価の具体的な合理性について)
原告は、i預託金返還債務が履行されないおそれ、ii通達による本件評価は、本件会員権の相続人が実際に第三者に譲渡した代金額と比較しても高額に失する、ことから、「通達による本件評価は、本件会員権の客観的な交換価値を反映していないというべきであり、(中略)このような事情は、本件通達その他の通達に拠らない評価をすべき特別の事情にも当たる。」と主張した。
東京地裁は、「本件各会社(ゴルフ場)について倒産手続きが開始されたとか、そのような動きがあるといった事情は全くうかがわれないし、(中略)預託金の返還期限延長に向けた動きが存するとか、預託金返還をめぐる紛争が発生しているとかいった事情については何ら主張立証がされていないのであって、これらの事実に基づく限り、預託金返還請求権が約定どおりに返還されないおそれがあることについて具体的な裏付けがされているとは到底いい難いもの」・「取引相場のないゴルフ会員権の処分価格を適正な時価と評価することに疑問が存する」と判示して、原告の主張を斥けた。
結論・特別な事情は認められない
東京地裁は、「本件通達評価は、一般に合理性のある本件通達を適正に解釈適用したものであり、かつ、個別事案として本件通達によらないことが正当として是認されるような特別の事情も認められない。」と結論付け、原告の請求を棄却した。
ではどうすればいいのかということですが、
取引相場のあるゴルフ会員権の場合
課税時期(相続の場合は被相続人の死亡の日、贈与の場合は贈与により財産を取得した日)の取引価格の70%に相当する金額によって評価します。
この場合において、取引価格に含まれない預託金等があるときは、次に掲げる金額との合計額によって評価します。
(1)課税時期において直ちに返還を受けることができる預託金等
ゴルフクラブの規約などに基づいて課税時期において返還を受けることができる金額
(2)課税時期から一定の期間を経過した後に返還を受けることができる預託金等
ゴルフクラブの規約などに基づいて返還を受けることができる金額の課税時期から返還を受けることができる日までの期間(その期間が1年未満であるとき又はその期間に1年未満の端数があるときは、これを1年とします。)に応ずる基準年利率による複利現価の額
取引相場のないゴルフ会員権の場合
(1)株主でなければゴルフクラブの会員(以下「会員」といいます。)となれない会員権
財産評価基本通達の定めにより評価した課税時期における株式の価額に相当する金額によって評価します。
(2)株主であり、かつ、預託金等を預託しなければ会員となれない会員権
その会員権について、株式と預託金等に区分して、それぞれ次に掲げる金額の合計額によって評価します。
イ 株式の価額
上記2の(1)に掲げる方法を適用して計算した金額
ロ 預託金等
取引相場のある会員権の(1)又は(2)に掲げる方法を適用して計算した金額
(3)預託金等を預託しなければ会員となれない会員権
上記1の(1)又は(2)に掲げる方法を適用して計算した金額によって評価します。
自由が丘税理士法人 重松輝彦
山林の種類と相続税評価
2017/04/10
今度の相続税申告のお客様は、山林も相続の対象となるので、復習も兼ねて国税庁のHPを掲載します。
山林の評価は、次に掲げる区分に従い、それぞれ次に掲げる方式によって行う。
(1) 純山林及び中間山林 (通常の山林と状況を異にするため純山林として評価することを不適当と認めるものに限る。以下同じ。) 倍率方式
(2) 市街地山林 比準方式又は倍率方式
(純山林の評価)
純山林とは、市街地から遠く離れた場所にあり、土地の財産評価に当たり、宅地の影響をほとんど受けない山林のことをいう。
純山林の価額は、その山林の固定資産税評価額に、地勢、土層、林産物の搬出の便等の状況の類似する地域ごとに、その地域にある山林の売買実例価額、精通者意見価格等を基として国税局長の定める倍率を乗じて計算した金額によって評価する。
(中間山林の評価)
中間山林とは、山林の中で、市街地近郊にある山林で、売買価格水準が純山林としての売買価格より高い水準にある山林のことをいう。
中間山林の価額は、その山林の固定資産税評価額に、地価事情の類似する地域ごとに、その地域にある山林の売買実例価額、精通者意見価格等を基として国税局長の定める倍率を乗じて計算した金額によって評価する。
(市街地山林の評価)
市街地山林とは、市街地にあり、土地評価に宅地の影響を受ける山林のことをいう。
市街地山林の価額は、その山林が宅地であるとした場合の1平方メートル当たりの価額から、その山林を宅地に転用する場合において通常必要と認められる1平方メートル当たりの造成費に相当する金額として、整地、土盛り又は土止めに要する費用の額がおおむね同一と認められる地域ごとに国税局長の定める金額を控除した金額に、その山林の地積を乗じて計算した金額によって評価する。
ただし、その市街地山林の固定資産税評価額に地価事情の類似する地域ごとに、その地域にある山林の売買実例価額、精通者意見価格等を基として国税局長の定める倍率を乗じて計算した金額によって評価することができるものとし、その倍率が定められている地域にある市街地山林の価額は、その山林の固定資産税評価額にその倍率を乗じて計算した金額によって評価する。
なお、その市街地山林について宅地への転用が見込めないと認められる場合には、その山林の価額は、近隣の純山林の価額に比準して評価する。
この3つさえ把握できれば、今後の相続税申告には問題ないが、一応細かい評価も記載しておく。
(広大な市街地山林の評価)
前項本文及びただし書の市街地山林が宅地であるとした場合において、24-4((広大地の評価))に定める広大地に該当するときは、その市街地山林の価額は、前項の定めにかかわらず、24-4の定めに準じて評価する。ただし、その市街地山林を24-4の定めによって評価した価額が前項本文及びただし書の定めによって評価した価額を上回る場合には、前項の定めによって評価することに留意する。
(保安林等の評価)
森林法(昭和26年法律第249号)その他の法令の規定に基づき土地の利用又は立木の伐採について制限を受けている山林(次項の定めにより評価するものを除く。)の価額は、45((評価の方式))から49-2((広大な市街地山林の評価))までの定めにより評価した価額(その山林が森林法第25条((指定))の規定により保安林として指定されており、かつ、倍率方式により評価すべきものに該当するときは、その山林の付近にある山林につき45から49-2までの定めにより評価した価額に比準して評価した価額とする。)から、その価額にその山林の上に存する立木について123((保安林等の立木の評価))に定める割合を乗じて計算した金額を控除した金額によって評価する。
(特別緑地保全地区内にある山林の評価)
都市緑地法(昭和48年法律第72号)第12条に規定する特別緑地保全地区(首都圏近郊緑地保全法(昭和41年法律第101号)第4条第2項第3号に規定する近郊緑地特別保全地区及び近畿圏の保全区域の整備に関する法律(昭和42年法律第103号)第6条第2項に規定する近郊緑地特別保全地区を含む。以下本項、58-5((特別緑地保全地区内にある原野の評価))及び123-2((特別緑地保全地区内にある立木の評価))において「特別緑地保全地区」という。)内にある山林(林業を営むために立木の伐採が認められる山林で、かつ、純山林に該当するものを除く。)の価額は、45((評価の方式))から49-2((広大な市街地山林の評価))までの定めにより評価した価額から、その価額に100分の80を乗じて計算した金額を控除した金額によって評価する。
自由が丘税理士法人 重松輝彦
被相続人が介護事業所に入居していても小規模宅地等の特例は適用可能か?
2016/10/02
被相続人が老人ホームで最後を迎えられ、あなたが土地の相続をすることになった場合、小規模宅地等の特例を使えるのでしょうか?
さいたま市浦和区のお客様から「小規模宅地の特例は、被相続人である母親が老人ホームに住んでしまって、同居していなかったら利用できないのか?」とご相談されたので、その説明と他に重要な箇所をまとめてみました。
1.被相続人が老人ホームに入っていても小規模宅地等の特例は使える
被相続人が老人ホームに入っている場合でも小規模宅地等の特例は使えますが、どなたが相続人になるかで使える要件は違います。
それぞれの要件を見ていきましょう。
前提条件
① 被相続人が要介護認定または要支援認定を受けている
② 自宅を賃貸していない
【配偶者の場合】
要件なく特例の適用が受けられます。
【被相続人と同居していた親族】
・相続開始から相続税の申告期限までにその建物に居住
・その宅地を申告期限まで保有している
【被相続人と別居していた親族】
・被相続人と相続人が日本国内に住所を有している
(相続人が日本国内に住所がない場合でも、日本国籍を有していればOK)
・被相続人に配偶者および同居の親族がいない
・相続人や配偶者が相続開始前3年以内に、自身(もしくは配偶者)の所有する家屋に居住したことがない
今回のご相談の場合、2次相続を考慮した場合のことなのですが、2次相続時には相続人が被相続人(母)と別居した場合の質問ですが、同居の親族が他にいるので、小規模宅地等の特例は難しそうな気がします。
2.要支援認定の申請中に相続が発生!小規模宅地等の特例をつかえるのか?
被相続人が、要支援認定の申請中であった場合でも小規模宅地等の特例は適用可能です。
これは、さきほど述べた前提条件「① 要介護認定または要支援認定を受けている」に反しているようにみえます。
しかし、市町村が許可する要支援認定は申請日から認定開始が認められています。
相続発生後に要支援認定が認められれば、相続開始前に要支援認定を受けていたとみなされるため小規模宅地等の特例の適用が可能なのです。
3.2世帯住宅に住んでいた被相続人が老人ホームに入っていた場合は小規模宅地等の特例を使えるのか?
2世帯住宅の場合でも小規模宅地等の特例の適用は可能です。
適用条件は、2世帯住宅での要件と同じです。
4.注意!相続前に自宅を“どう使っていたか”で特例が使えなくなることも
被相続人が老人ホームに入居している間、住まれていた自宅を誰が・どう使っていたかによって、小規模宅地等の特例が使えないことがありますので、十分に注意が必要です。パターンに分けてご説明していきます。
小規模宅地等の特例が使える場合
被相続人が居住していた建物を離れて老人ホームに入所したような場合には、一般的には、それに伴い被相続人の生活の拠点も移転したものと考えられます。しかし、個々の事例のなかには、その者の身体上又は精神上の理由により介護を受ける必要があるため、居住していた建物を離れて、老人ホームに入所しているものの、その被相続人は自宅での生活を望んでいるため、いつでも居住できるような自宅の維持管理がなされているケースがあり、このようなケースについては、諸事情を総合勘案すれば、病気治療のため病院に入院した場合と同様な状況にあるものと考えられる場合もありますから、一律に生活の拠点を移転したものとみるのは実情にそぐわない面があります。
そこで、被相続人が、老人ホームに入所したため、相続開始の直前においても、それまで居住していた建物を離れていた場合において、次に掲げる状況が客観的に認められるときには、被相続人が居住していた建物の敷地は、相続開始の直前においてもなお被相続人の居住の用に供されていた宅地等に該当するものとして差し支えないものと考えられます。
(1) 被相続人の身体又は精神上の理由により介護を受ける必要があるため、老人ホームへ入所することとなったものと認められること。
(2) 被相続人がいつでも生活できるようその建物の維持管理が行われていたこと。
(3) 入所後あらたにその建物を他の者の居住の用その他の用に供していた事実がないこと。
(4) その老人ホームは、被相続人が入所するために被相続人又はその親族によって所有権が取得され、あるいは終身利用権が取得されたものでないこと。
②老人ホーム入居前から親族がずっと住んでいる
小規模宅地等の特例を使えるけど減額率が下がる場合
①自宅に親族以外の方が住んでいる場合
老人ホームに入居中、自宅を貸付している場合、特例は使えますが減額率は下がります。
なぜ減額率が下がるかというと、自宅を貸すことは小規模宅地等の特例のなかの貸付事業用宅地にあたるためです。
貸付事業用宅地とは“適正な賃料(世間相場)”で貸し付けていれば、貸付事業用宅地として200㎡まで50%の評価減が可能になる特例です。
特に、いつからかしていなければいけないという貸付期間の制限はありませんが、最低現、相続税の申告期限まで貸し続けている必要があります。
相続税評価時の広大地の判定条件
2016/06/07
広大地の判定条件には下記の3要件があります。
- 地域における標準的画地に比べて著しく地籍が大きいこと
- 戸建分譲住宅素地であること
- 開発行為を行う場合に道路・公園等の公共公益施設用地の負担が必要なこと
そこで広大地判定の3要件について詳しく検討いたします。
1.地域における標準的画地に比べて著しく地籍が大きいこと
標準的画地とは、
通達や「情報」にはその物件を含む地域の標準的画地が○○㎡とはありません。鑑定評価では対象土地を含む同質的価格形成要因を具備する近隣地域と相続税路線価評価では状況類似地域一定の地域として捉えその地域でもっとも標準的な画地を設定しています。
例えば低層住宅地域であれば一画地の規模が約120㎡の低層住宅地、ミニ住宅地域であれば一画地の規模が約80㎡の低層住宅地である。土地利用が一元化していれば標準的な用途がはっきり確定できますが住宅、工場、アパート等が混在する地域の標準的な用途の判定は難しいです。
その判定はその地域の土地利用がもっとも多い利用で工場から住宅地域に移行している地域であれば住宅地域として取り扱い更にその住宅地の標準的使用(形状・規模・用途)を判定しなければなりません。
著しく地籍が大きいとは、
上記の標準的画地の地積に比べ著しく地積が大きいとは具体的にどういうことなのか。大きいとは相対的に捉えることになるが、通達・情報では下記の面積以上と記載されています。
市街化区域 | 三大都市圏 | 500㎡ |
同上 | それ以外の地域 | 1000㎡ |
非線引都市計画区域 | 用途指定なし | 3000㎡ |
同上 | 用途指定あり | 市街化区域に準じた面積 |
例外
上記のとおり三大都市圏の市街化区域であれば広大地は500㎡以上がの面積が必要ですが例外規定として500㎡未満であっても、ミニ開発分譲が多い地域に存する土地については広大地として認められる可能性があります。
税務当局は、客観的である面積基準を目安として判断してきますので注意が必要です。
(広大地の留意点1)
区画割するに当たり、最も経済的かつ合理的に区画すること
(広大地の留意点2)
広大地修正が出来るようになり、開発想定図は原則として添付要件ではなくなりました。しかし税務当局の認定を受けやすくするには開発想定図は添付した方がよいです。
2.戸建住宅用素地であること
ここで一番問題となってくるのは、周辺の利用状況から、その土地の最有効使用が戸建住宅用地かマンションか否かの判断が困難な場合です。
国税庁や税務署では、「周辺の状況や専門家の意見等からして判断して明らかにマンション用地として適していると認められる土地を除き、戸建用地として判断しても良い」といっています。
現実には明らかにマンション用地として判定できない土地が多いから悩む訳です。何んとなく中途半端な見解ですから税理士さん等の申請者は敢えて税務当局と争いたくはありませんから安易にマンション用地と判断し、広大地減価をしないケースもあるのです。
この判断如何によって相続土地の課税評価額に差異が生じ結果的に納税額に影響しているのです。
広大地の判定に悩む場合は、会計士・税理士だけでは不十分なことも考えられるので、依頼者である相続人に相談して、不動産鑑定評価代金も別途報酬として支払ってもらうように依頼したほうが、お互いのリスクが軽減できるかと思います。
3. 開発行為を行う場合に、道路、公園等の公共公益施設用地の負担が必要なこと
公共公益施設用地の負担の必要性については次のように示されています。
「経済的に最も合理的に戸建住宅の分譲を行った場合の当概開発区域内に開設される道路の開設の必要性により判断することが相当である。」
中途半端な調査、分析では広大地としての判定は得られません。本来は 広大地にも係わらず広大地減価の適用をしないで申告してしまった場合の担当税理士さんへの信用不信、最悪の場合は損害賠償等のリスクが課せられてしまいます。
これを防ぐには、その道の専門家である不動産鑑定士にその地域を調査してもらい広大地判定意見書を発行してもら いその上で税務当局と交渉してもらうことです。
今まで広大地の案件はないですが、面積で該当しそうになった場合には、土地の評価は日税サービスの土地評価サービス部門か知り合いの鑑定士に頼むのがよさそうです。相続税の申告の納税額が大きくて、3億円以上の納税額を全額支払えという判決がでてしまったので、少し間違えたことを考えるといくら税理士保険に加入しているとはいえ、リスクが高いので、慎重にやらないとまずいですね。
自由が丘税理士法人 重松輝彦
相続開始の年に被相続人から贈与を受けた宅地に係る小規模宅地等の特例の適用の可否
2016/06/01
平成○年中に甲は父から貸家建付地の敷地(276)の持分2分の1の贈与を受けましたが、同年中に父が死亡しました。
この場合、その贈与により取得した土地の価額は贈与税の課税価格に算入されずに、相続税の課税価格に加算されることになります(相法19)が、この土地について小規模宅地等の特例を適用する場合には、甲が贈与を受けた持分に対応する面積を含めて200まで適用することができると考えて差し支えありませんか。
(注) 甲は父から遺産を相続しています。
<回答>
小規模宅地等の特例が適用される財産は、個人が相続又は遺贈により取得した財産に限られています(措法69の4)。
したがって、甲が贈与を受けた土地の持分は相続又は遺贈により取得したものではありませんから、その贈与を受けた財産の価額が相続税法第19条の規定により相続税の課税価格に加算されたとしても、その贈与を受けた財産については小規模宅地等の特例の適用はありません。
また、甲が贈与を受けた土地の持分について相続時精算課税を適用する場合も、その土地の持分は相続又は遺贈により取得したものではありませんから、その贈与を受けた財産については小規模宅地等の特例の適用はありません。
相続時精算時課税を利用すると、家賃収入等の収入が贈与者に帰属するので、先に移転するメリットはあるのですが、いざ相続開始となると小規模宅地等の特例を利用できないデメリットもあることも考える必要がありますね。
被相続人の経営していた株式の評価について
2016/05/14
中小企業の株式のように、上場されていない会社の株式は「非上場株式」と呼ばれ、相続税の計算上、複雑な評価が必要になります。
非上場株式の評価は細かく規定されていますが、基本的には株主の地位と会社の規模の2つのポイントがあります。
○株主の地位による評価の違い
株主が社長や社長の親族の場合、一般に持ち株数も多く、当然会社に対する支配権も大きいわけですから、その他の株式に比べて評価は高くなります(原則的評価方法といいます)。
一方、その他の株主は会社に対する支配権がないため、もっぱら配当金を受け取ることの期待のみとなりますので株式の評価は低めになります(配当還元方式といいます)。
○会社の規模による評価の違い
会社に対して支配権を持つ株主の株式を原則的評価方式で評価する場合に、会社によっては非上場でも上場会社に近いものから個人商店に近いものまで様々なものがあります。
そこで、上場会社に近いものについては会社の配当金額、利益金額、純資産価額を同業種上場会社の平均と比較して上場会社に準じて評価します(類似業種比準方式といいます)。
一方、個人商店に近いものについては会社の純資産(資産-負債)価額を基に評価します(純資産価額方式といいます)。なお、上場会社と個人商店の中間にあるような会社は、類似業種比準方式と純資産価額方式を併用して評価します(併用方式といいます)。
小会社は原則として純資産価額方式で評価しますが、類似業種比準方式と50%ずつ併用しても評価できます。
非上場株式の評価額は、皆さんが想像される以上に、多額になってしまうケースがほとんどです。評価が多額になり、相続税が払えないということになっては手遅れです。また、非上場株式は市場で売却もできません。
相続で困らないためには、生前のうちに株価を評価し、事業承継対策をうっておく必要があります。これは早めにすればするほど効果があります。
また、経営者としても、自社株の評価額は当然把握しておく必要があります。
自由が丘税理士法人 重松輝彦
賃貸用マンションの相続税評価
2016/04/09
更地に賃貸住宅や貸しビルを建設した場合、更地の時に比べ土地の相続税の評価額が下がります。この賃貸住宅等を建てたときの土地の評価額は、以下の算式で計算されます。
貸家が建てられている土地の評価額 = 更地の評価額 ×(1-借地権割合×借家権割合)
相続税評価額計算上の借地権割合は地域によって異なっていますが、60~70%の地域が多くなっています。借家権割合は、大阪など一部を除き30%となっています。従って、上記算式によると、借地権割合に借家権割合を掛けた分だけ評価が下がりますので、更地の評価に比べ約18%(借地権割合60%の地域)または、21%(借地権割合70%の地域)の評価減になります。また、家屋も貸家については、以下の算式で計算されます。
貸家(建物) = 建物の固定資産税評価額 × (1-借家権割合(通常30%)×賃貸割合)
貸家については、30%の評価減が設けられています。元々、建物の相続税の評価額は建築代金の6~7割で評価され、更に貸家の評価減があるため、結果的に貸家の相続税評価額は建築代金の約50%になるといわれています。
自由が丘税理士法人 重松輝彦
非上場株式の相続税評価
2016/04/08
取引相場のない株式の相続税評価を行う際、純資産評価で決算書の簿価を相続税評価に焼き直しをする必要があります。ひとつひとつの資産を相続税評価に置きなおしていく作業は骨がおれます。
ここで、やりがちなミスが、決算書上“簿外”になっている“税務上の資産”がある場合です。
分りやすい例で、減価償却の償却超過があります。会計上は減価償却資産として100計上されていたとします。ただ実際は税務上、減価償却が20否認されていて実際の税務上の簿価は120だったとします。この場合には差額の20が決算書上、簿外になっていますので、相続税評価を行う際には反映させる必要があります。
これは、法人税申告書の別表5を見て確認をする必要があります。
別表5の記載内容だけではその内容がわからない場合がありますので、その申告書を作成した税理士に確認をする必要がでてくる可能性もあります。
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